今日こそは。
僕の置き傘。
どうやら、会社の誰かに時々使われているみたい。
その傘は、ふつうのビニール傘で、持ち手の部分が黒いやつ。会社の共用の傘立てに置いている。名前も書いて無いし、特に誰の物だと分かるサインもしていないので、しょうがないのだけど。
たぶん、突然雨が降ってきて、ちょっと社外から出る用事があるときなんかに、使われているのかな。
雨の日になると、必ずといっていいほど、雨のしずくに濡れて、傘立ての手前のほうにあるのを、見かけるから。
ああ、たぶん、この傘はもう、誰のものでもなくて、「みんなが共用で使ってもいい誰かの忘れ物の傘」という認定をされてしまったのだなあと思う。
自分が普段から、折り畳み傘を携帯していることもあり、会社へ持ってきてからほぼ半年間、今日まで使う機会がなかったこの傘。
べつに、使ってもらうのは構わないんです。
どこかに放りだされたり、無くなったりするわけでもなく、いつもその傘立ての中に戻るわけだし。
でもね、自分がいざ、それを使おうと思うと、なんだか逆に使いづらいのです。笑
自分の傘なのだから、べつに、帰るときに使って、そのまんま家に持って帰ったって構わないはずなのに。
この傘が無くなったら、今までこれに頼ってきた人はどうするのだろうとか、余計なことを考えてしまう。
でも、今日こそは、この傘を使ってやろうと思った。
「誰もが自由に使える誰かの忘れ物の傘」というポジションは、他の少し高級そうな、誰かの「ほんとうの」忘れ物の傘にまかせて。
今日こそは、使ってやろう。僕の傘として。
そんなことを考えていた、雨の日のお昼休み。